皆さんこんにちは!
雄心工業、更新担当の中西です。
さて今回は
~劣化~
外装・内装を問わず、塗膜は紫外線・水・熱・汚れ・機械的ストレスに晒され続けます。劣化のサインを早期に捉え、原因に合わせて手当てすることが、美観・耐久・ライフサイクルコストを左右します。現場で使える視点だけをギュッと整理しました。
目次
1|代表的な劣化症状(見える順)
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チョーキング(粉吹き):触ると白粉が付く。樹脂分解と顔料露出。
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退色・艶引け:UVと熱で樹脂が劣化、色が浅く艶が落ちる。
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汚染・雨筋:親水性不足や静電で埃が定着、流下水で筋状に。
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藻・カビ:北面・日陰・水はね部に発生しやすい。
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ヘアクラック:微細な線状の割れ。下地の乾湿や熱伸縮が原因。
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膨れ・剥離:含水・塩分・下地未処理・相性不良で付着喪失。
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錆・錆汁:金属下地や金物部からの腐食流出。
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白華(エフロ):モルタル系での石灰分析出。
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粉化・脆弱化:古塗膜が劣化し、擦ると崩れる。
2|メカニズム(なぜ起きる?)
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紫外線・酸化・加水分解:樹脂骨格が切れて脆くなる。
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温度サイクル:熱膨張差で応力集中→クラック。
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水分・塩分:含水や塩分が付着力を下げ、金属は腐食促進。
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化学汚染:排気・酸性雨・アルカリ成分との反応。
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施工起因:洗浄・ケレン不足、過希釈、規定膜厚未満、乾燥時間無視、露点管理不足、下地と塗料の相性不良(可塑剤ブリード等)。
3|素地別“要注意ポイント”
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金属(鋼・亜鉛・アルミ):錆・白錆・電食。防錆エポ下塗り+膜厚管理が命。
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モルタル/コンクリート:アルカリ・含水・白華。含水率・pHとフィラーで平滑化。
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窯業系サイディング:目地シール劣化→浸水→剥離。打替え前提で計画。
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木部:吸い込みムラ・含水変動。含浸系+上塗りで追従性を確保。
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屋根(スレート/金属):高温・雨打・縁切り不良が致命傷。遮熱・防錆・縁切りがキモ。
4|現場でできる簡易診断
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チョーキングテスト:手で擦り粉の量を確認。
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付着性:クロスカット/引張(必要に応じて)。
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膜厚測定:電磁式・渦電流式で下塗り含む総膜厚を見る。
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含水率:モルタル・木部はメーターでチェック。
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塩分試験:海沿い・道路沿いでの表面塩分。
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赤外線サーモ:膨れ・含水部の非破壊確認。
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目視・打診:浮き音、ヘアクラックの分布、錆の発生源。
診断は「症状→原因仮説→試験で裏取り」の順で。いきなり塗り直さない。
5|対処の優先順位(ステージ別)
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初期(汚れ・軽微な艶引け):洗浄・撥水/低汚染コートで延命。
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中期(チョーキング・退色):下地調整+再塗装(グレード見直し)。
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後期(クラック・剥離):補修工法+再塗装(Uカット・シール、樹脂モルタル、錆処理ST2〜3等)。
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下地損傷:張替え・防水改修・役物交換を含む。
6|“劣化させない”ための設計と施工
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設計:
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形状で水を“ためない”(笠木・水切り・ドレン)
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低汚染・親水・ラジカル制御・フッ素/無機など高耐候の選択
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屋根は遮熱で温度ピークを下げる
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下地処理:高圧洗浄/ケレン/素地調整(フィラー・パテ)/プライマー適合
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施工条件:温湿度・露点差管理、規定膜厚・乾燥時間厳守、過希釈禁止
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付帯:シーリングは打替え優先・三面接着回避、金物は防錆系下塗り
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排水計画:縁切り(屋根スレート)、シールで“水止め”しない箇所を理解
7|環境別メンテナンス目安(一般的な参考)
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海沿い・工業地帯・強日射面:短め(例:8〜10年で再塗装検討)
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都市部・標準環境:10〜15年
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ハイグレード塗料(フッ素・無機)はさらに延伸可
※素材・方位・設計・施工品質で大きく変動。定期点検で決めるのが原則。
8|よくある“施工起因”の劣化と防止策
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洗浄不足→密着不良:下地に合う洗浄圧・洗剤を選びリンス徹底。
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過希釈→膜厚不足:規定希釈・ウェット量を守る。
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乾燥不足→艶ムラ・縮み:インターバル厳守、天候読み。
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相性不良→ベタつき・剥離:可塑剤ブリード対策プライマー、試し塗り。
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目地処理不良→割れ再発:バックアップ材、プライマー、厚み管理。
9|アフターと記録の“コスパ最強”運用
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竣工台帳:材料銘柄・ロット・希釈率・膜厚・天候・写真
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定期点検:3か月→1年→以後1〜2年ごと(洗浄・小補修で延命)
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クリーニング:雨筋・藻カビは早期に除去して再付着を抑える
10|現場用チェックリスト
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□ 症状(場所・面・範囲・発生日)
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□ 下地種別・含水率・pH・塩分
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□ 洗浄・ケレンの実施内容
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□ プライマーの適合と塗布量
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□ 上塗りの膜厚・回数・乾燥時間
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□ シーリング(打替え/増し打ち・プライマー有無)
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□ 役物・金物の防錆処理
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□ 施工環境(温度・湿度・露点差)記録
劣化は“自然現象”ですが、設計(形状・材料)×施工(下地・膜厚・条件)×維持(洗浄・点検)で速度をコントロールできます。
症状だけで判断せず、原因→診断→対処をワンセットで。これが、仕上がりを長持ちさせ、クレームと再工事コストを最小化する最短ルートです。
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